仙台高等裁判所 昭和27年(う)202号 判決
(イ) 前記原審証人島田隆の供述によれば、被告人が本件放火被疑事件で勾留される直前、本件焼失した工場に付被告人名義に公正証書原本不実記載をした被疑事件で、約二十日間勾留せられたことが認められる。然し、この公正証書原本不実記載は、五十嵐タイの告訴により、既に本件火災前から捜査が進められていたことが明かであるから、この被疑事件で勾留されたとしても、それのみを以て、直ちに所論の如く、これを合法を仮装した不当拘禁であるとなし、前記自供を以て、これに基ずく肉体的心理的圧迫強制により虚偽自白を余儀なくされた任意性のない疑のある供述であるとなすを得ない。
(中略)
(ロ) 君島忠一が被告人に放火の話を持出した日時等に付て、君島の警察以来の供述に必ずしも一貫しないところがあることが所論のとおりであるが、そのような日時に付て確たる記憶のないのは寧ろ通例であるのみでなく、それは枝葉末節のことであつて、君島が被告人と共謀関係のない限り、放火の危険を冒しても一銭にもならぬこと自体から考えて、共謀に関する同人の供述に合理的証明力があることは極めて明かである。なお、間接証拠なるが故に合理的証明力がないとの所論に対しては、説明の要をみない。